司法書士になる!

司法書士受験に特化した内容と学習全般に通じる情報とを提供するブログです

【不動産登記法】記述問題の解き方の手順を解体

f:id:tsjtksh:20171014152544j:plain

時間の限られた司法書士筆記試験を攻略するコツは何でしょうか。
 
なるべく考えずに機械的に反射で問題を解けるようにしておくことではないかと、私は考えています。
 
そのためには、択一問題においては、過去問と条文と判例と先例でどれだけ精確な知識を蓄積させ、自在に出力できるかという点が重要です。
 
そして、記述問題においては、自分なりの『作業工程』『確認すべき事項』を用意しておくことが、そのために有効な手段の一つであるといえます。これらを確立させれば、現場でなるべく考えずに惰性で記述問題を解き進められるようになり、時間内に書き切りつつ得点を安定させていくことに繋がっていきます。
 
孫氏の兵法でいうところの、いかに戦わずにして勝つか、そして、そのための勝算をどれだけ積んでおけるかという部分でもあります。
 
そこで、今回の記事では、手前味噌ではありますが、私の不動産登記法の記述問題の作業工程と確認すべき事項を列挙していきます。思い出すままに羅列していったので読み難い事この上ないかもしれません。
 
私の記述の解法の方針は、問題文から重要となる事項を答案構成用紙に抽出していき整理して、それを清書するという手法を採っています。何百問という膨大な問題を日々解いていくなかで、問題用紙を行ったり来たりするような無駄となる時間を極力省いていくための方途を追求していくとこうなりました。
 
大見出しに作業工程を書き、そのなかに細かな確認事項を落とし込んでいます。また、答案構成用紙にどのようにメモを反映させるか、そして、1時間程度で解き切るとして各工程での目安の時間を記載しております。自分なりの記述問題の解き方を確立させるにあたっての参考になれば幸いです。
 
なお、初学者はいきなり細かい確認事項まで倣うと非効率でありますので、最初は以下の大見出し程度の作業工程を取捨選択しチェックリスト化して、机の前に貼り出し練習問題を解いていきながら、必要に応じて確認事項を増やしていけばいいかと思います。
 

 

 
参考:不動産登記法の答案構成用紙 

f:id:tsjtksh:20171014223820p:plain

①問題文(問1とか問2の部分)をさらっと確認(目安3分)

回答すべき事項は何か

建物か土地か、いずれの権利を申請するのか
誰から誰への依頼か(依頼に来てない奴がいたら注意)

登記申請の日

各問で同一日の申請なのかズレているか

登記申請の個数はいくつか

問題文の記載か答案用紙の枠数から確認

登記不可なものを聞く設問の有無

登記不可のものを聞いてくるときは、基本的に登記不可のものがあると考えておく
 
 
▷これらを答案構成用紙の片隅にメモしておき、別紙や事実関係を読み解く際に常に意識しておく
 

②添付情報欄・登記簿・別紙をさらっと確認(目安1分)

土地・建物の個数はいくつか

甲・乙の2つの不動産のケース以外に注意

添付情報は記号か

記号であれば、筆記時間を節約できるので問題検討に多めに時間を割ける

別紙のボリュームは

別紙の多寡で、別紙が主か事実関係が主か予測を立てておく

相続型か合併型か

戸籍があれば相続型、登記事項証明書があれば合併型にざっくり仕分け

法人登記簿があれば、利益相反があるだろうなと覚悟

同じ名前が出てこないか役員欄に気を配る

法人登記簿では、商号・本店・登記記録に関する事項に注視

合併・分割が複雑に絡むときは図示して時間をかけてでも状況把握に努める

住民票があれば、その住所と氏とが登記簿のものと違っていないか確認

氏名変更、住所変更は基本的にあるものと認識しておくほうがよい

 

③登記簿を答案構成用紙にざっくり写す(目安5分)

答案構成用紙の使い方

・答案構成用紙は横に使う
・真ん中に時系列を記載していくための直線を一本引く
・真ん中線の上に甲建物の物権変動の推移を表すための直線を、下に乙建物の物権変動の推移を表すための直線を引く(物件が甲建物・乙建物の2つの場合)
・上の直線、下の直線に、それぞれの権利関係を書き写していく(順位番号、権利名、持ち分、権利者)
・自分なりの略字を作っておき時短を図る
 
(略字についての過去記事)

土地か建物か区分建物か

    ・区分だったら敷地権は所有権か賃借権か
    ・土地だったら農地でないか
    ・個数は2個か、あるいは1個か3個か4個か 

根抵当権はあるか

     ・ある→確定期日/相続/合併/分割/確定請求/差押/破産がないか
                ※頭文字をとって「カ・ソ・ガ・ブ・セ・サ・ハ」と覚える
                ※差押は原因までみる(元本確定するか否かが変わる)
     ・確定期日はあるか二回チェック(絶対に見逃さない)
      →確定期日の記載があれば時系列に書いておく
     ・相続があれば6ヶ月、合併分割あれば1ヶ月後の日付を時系列に書いておく

権利者・義務者・債務者が複数でないか

申請人全員が義務者でなく登記ができないというパターンや元本確定請求の可否などの重要論点に絡みやすい

各不動産の登記事項証明書の作成日付をチェック

ズレていたら登記事項が増えているが登記簿に反映されていないというパターンがありうる

各不動産の管轄は同一か別か

一括申請できるか否かに関わる

 

 

Sponsored Link

 

④別紙の事件を時系列に沿って答案構成用紙に書き出す(目安10分)

(先に別紙を答案構成用紙に書き写しておくと、事実関係と別紙を行ったり来たりすることなく事実関係を読み進められる)

真ん中の時系列上に事件の日付と、事件の内容(登記原因)を書いていく

承諾日や農地の許可日がズレて登記原因日付が別にあるときは、それも書いておく。登記原因日付が確定しているものは◯で囲む。

その際、時系列上に別紙の番号を書いておく

あとで見返すときに楽 (例:別紙1なら「ベ1」等)

別紙の時点で登記申請が予測できる場合は、登記申請の概要も書く

目的、申請人、添付情報等をメモ。どの事件から派生した登記申請かわかるように矢印を引いておく。

戸籍や相続関係説明図があれば写しておく

時間がかかるので、別紙のままで把握できるときは不要
未成年に注意▷添付情報や利益相反の論点に絡んでくる
 
 
▷以前は、オーソドックスに事実関係を読んでから別紙を確認していましたが、先に別紙から確認することで5分から10分の時間短縮ができるようになりました
 

⑤問題文の事実関係を確認する(目安10分)

ここで初めて問題の冒頭に戻り、事実関係を初めから読み始める

別紙の先読みにより起こる事件を想定しながら事実関係を読み進められる

別紙で確認した時系列を補足していき、登記も確定させていく

時系列上の日付の上に事実関係の番号を書いておく

あとで見返すときに楽 (別紙の番号の目印とは異なるものに) 

⑥事実関係の補足を確認する(目安3分)

登記の順番の指定は要注意

甲区から先とか甲土地から先とか

順番指定がある場合は答案構成用紙にもその旨を記載しておく

読み間違えると破滅するので慎重に

承諾の日付はイレギュラーでないか確認

申請日までに承諾済みが一般的だが、承諾の日付が指定されていて登記原因日付が変わることもあるので注意

利益相反の考慮を除外する指定はないか

利反の検討は時間がかかるため省略できるかできないかで時間の使い方が変わる

単独申請の指定はあるか

申請人欄の記載、添付情報が変わってくる

課税標準の額を答案構成用紙に書き写す

個人的に、青字とかに色を変えておくとすっきりする 

⑦問題文を再度確認する(目安1分)

最初に確認した問題文の指定条件に見落としはないか 

⑧注意事項を確認する(目安3分)

代表機関の資格を書くか

会社法人等番号を書くか

承諾証明情報にはかっこ書が必要か

登記不要のときの記載方法は何か

答案用紙のどこの欄に「なし」と記載か、「登記不要」と記載か
 
 
▷試験直前期には、本試験の記述の過去問3年分程度の注意事項を確認しておき、毎年同じ文言と異なってくる文言とを把握しておくとよいでしょう
 

⑨添付情報一覧を確認する(記号で答える問題形式の場合)(目安1分)

添付情報一覧から目当ての添付情報を探すのは意外と時間がかかるので、登記原因、登記識別、住所証明情報、承諾・証明情報など区分して、区切り線を入れるなどして探しやすくしておく
 

⑩登記のできないものがないかをチェック(目安3分)

根抵当権関連が出やすい

 

Sponsored Link

 

⑪登記の順番をチェック(目安3分)

名変、一括申請、相続、混同で登記の順番がズレないか

登記申請の枠数が一つ余るときは、混同の場合が多い

問題文の指定に沿った順番になっているか

念入りに確認したい

登記の申請数は適切か

枠数より2枠以上少ないときはどこかがおかしい

登記申請する順番をメモしておく  

いざ清書するときに確定させた順番を間違えないように

⑫申請人、添付情報を最終確定させる(目安5分)

死んでいる奴はいないか

逆に死んでいても登記申請日時点では生きていて申請人になれるというパターンにも注意

 

利益相反はないか

何の論点も見当たらず、なぜわざわざ書かせるのか分からないような登記は利益相反が隠されている場合が多い

 

⑬登録免許税の計算を行う(目安1分)

持分移転のときの割り忘れに注意
 

⑭清書していく(目安10分)

判別不可の部分は空白にしておき、とにかく解る部分だけ埋め切る 
 
 

 

Sponsored Link

 

おまけ(登記できるかの判別がつかない、順番を確定できないときの対処)

登記できるかの判別がつかない、順番を確定できないときはどうすべきでしょうか。悩んでいても無慈悲に時間が浪費されるだけです。 
 
そのようなときは、該当する登記ができるパターンと登記ができないパターンの両方で、全体として登記申請の個数と順番がどうなるかを考えます。また、順番を確定できないときは、考えられる順番のパターンで登記申請を並べてみます。
 
そこで、登記申請の個数や問題文の指定から、問題作成者の意図を考え、もっとも有り得そうなパターンを推測します。
 
たとえば簡単な例を挙げると、元本確定しているか否か判別がつかないパターンがあったとして、その原因日付のあとに元本確定前にしかできない根抵当権の登記が2件もあれば、出題者の意図からして元本確定はないんだろうな、と推測して元本確定させない方に賭けてみます。
 
 あとは祈りましょう。 
司法書士 パーフェクト過去問題集 (11) 記述式 不動産登記法 2018年度 (司法書士スタンダードシステム)

司法書士 パーフェクト過去問題集 (11) 記述式 不動産登記法 2018年度 (司法書士スタンダードシステム)

  • 作者: Wセミナー/司法書士講座
  • 出版社/メーカー: 早稲田経営出版
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る