今から司法書士を目指そうと思ってこの記事を偶然に読んだ人は幸運だ。
なぜなら今から司法書士を目指すことを辞められるから。
司法書士をおすすめしない理由
・合格がむずい
・その割に認知度が低い
・大して稼げない
司法書士の合格率は3%前後、文系最難関と言われる司法試験の合格率は今や3割前後。その差、なんと10倍。母集団は全く異なるが、単純な確率から言えば弁護士の方がなりやすい。司法書士試験は、1年間、1日10時間の勉強をしても落ちる程度には難しい。しかも禿げる。
「簡単やろ?1年で合格したろ」なんて思ってるとドツボに嵌まる。なぜなら同じように今年で合格してやろうって輩が2万人弱いて、結局、そのうちの3%しか掬い上げられないためである。しかもその97%の努力を灰燼に帰すために理不尽な問題を出すのである。「仕事しながらでも余裕でっしょろ」なんて思ってると一生受験し続けることになる。金を溜めてローへ行ったほうがよい。凡夫の憧れの赤門のローでさえ、合格率5割程度ある。研修中は給付金も出るようになったしね。ちなみに司法書士は研修中は金が出ないので、毎日あんパンを食うしか無い。
「最近何してんの」って問われ、「何の因果か司法書士てなもん目指してる」つっても、「あ、図書館の仕事?真面目ー!今度ハリー・ポッターのアレ貸してよ」とか「へぇ、弁護士目指すんだ、逆転裁判の影響かしらん?」とか「現実見ろや、空き缶でも拾っとけ」「おどれ、まだ生きとったん?」とかが大半で、「え、あんな難関資格に挑戦してるの?素敵すぎる!遅滞なく抱かれたい!」なんて御仁は皆無。もはや余人にとっちゃあ、行政書士と司法書士の違いなんてサイゼリヤの間違い探しみたいなものだろう。
もちろん他者の評価なんていう不純なものを拠り所として目指し始める人がいるとも思えないが、たとえば仕事を辞めて資格取得に邁進し始めたら、否が応でもその反応が自己を規定してくるわけである。
私の場合、三十路前で退職して一時はドラクエⅩの世界で生きようと思ったが、ゲームの世界でさえ、卓抜した職人技術がなければ金貨を稼げないことを知って絶望し、残された選択肢として臍を噛みながら司法書士という職を見つけて目指したわけであるが、大学時代の知人らはとうに器量の良い嫁を見つけ、憎たらしい猿みたいな子を一つも二つも拵えて、いっぱしの貯金があって、丸っこい車を買って、適当な役職について適度に不倫しながら、頭金を払って住宅ローンを組んで一家の主を満喫しているよ。どうせ推定の及ばない嫡出子なんだろう、不純な、なんて邪な気持ちを私は思いながら。素直に祝福できない自分に反吐を出しつつ。ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ。基本的な欲求が満たされぬゆえに他者に寛容になれぬのだななんてマズローを思い出しつつ。悪いことは言わないので、受験生になるならFacebookは封印しておいた方がイイネ。隣の芝って青っ。こうした塩梅で世間との溝が大きくなっていく。
あと、まぁ、そんなに稼げない。見聞きする範囲の話ではあるが。起業勤めして役職昇って行った方がよほど金子を稼げる。しかし定年後も稼ぐ手段があるというのは魅力ではある。とはいっても弁護士と比べると遜色が大きい。例えば、弁護士って初回面談で何千円も取るのが普通だが、司法書士は大体無料。そもそも弁護士も過当競争で年収がだだ下がりであって、司法書士の職域に侵食してくるとも限らない。あとアメリカではAI弁護士が出てきて交通違反の切符の取消に躍起してたりもするが、司法書士の業務はモロにAIに取って替わられる業務でもあって怖い。AI怖い。
それに、司法書士として独立して不動産屋を相手にするなら、サラリーマンと同じような接待もあってバックを求められたりもするとかしないとか。脱サラした意味ねー。司法書士の仕事は結果が等しいから、人間性以外に付加価値をつけにくいのであろう。至極当然な話ではあるが、資格を取れたからといって営業もせず仕事が舞い込んでくるわけではない。独立したいだけなら、宅建士取ってどこかの不動産屋で数年修行した方がよほど確実性が高い。
とまぁ、いいことなしの司法書士であるが、何をしょうもないことこいつは抜かしとんじゃぼけ、僕ぁ、それでも司法書士になる理由がある!って人は目指すべきであるし、無いなら撤退すべし、撤退できるというのは幸運なこと。経験者からは、コンコルドの誤謬にならないよう祈るばかりである。
時間と費用を費やすほど撤退はしづらくなる。一方で、生え際は無慈悲に後退している。
そして、このブログはそんな血迷った方々への示唆に少しでもなればと思って綴っていく次第である。
その後・・・