私は、受験生活当初は煙草を一日一箱程度吸っていましたが、とあるタイミングで煙草を一切断つようにしました。今回は、禁煙することで得られたメリット、デメリットについて実体験を元にまとめてみました。
メリット・デメリットについてそれぞれ、勉強面に経済面、そして心身面と、大きく3つのグループに分類して列挙しました。
禁煙のメリット
勉強面
勉強できる場所が増えた
一昔前は、電車であろうが会社であろうがどこでも煙草を吸えました。しかし、健康嗜好の高まりによって、喫煙場所は年々縮小の一途を辿っています。喫煙者は、喫煙できる、あるいは喫煙スペースがある飲食店や自習室を探しますが、それだけでも一苦労です。
さらに、場所によっては、喫煙可能な場所は豚舎のように窮屈で社会不適合者の吹き溜まりになっていることもあり、勉学に励めるような環境でないことも多々あります。その点、非喫煙者であればほぼ全ての飲食店や自習室で清浄な空気の中で学習することが可能です。
煙草を止めることで、どこでも気軽に勉強できるようになりました。
勉強できる時間が増えた
上述の通り、喫煙者は喫煙スペースを探しゾンビのように街を彷徨うのですが、そのために、まず無駄な時間がかかります。さらに、勉強場所が見つかっても、喫煙という小休止によって勉強に充てられた時間が細切れに割かれていきます。一日単位では大した時間ではありませんが、年単位で積み重ねると大きな時間となります。
禁煙することによって、喫煙するために要していた時間を勉強に充てることができるようになりました。
記憶力がよくなった
私の実感として、煙草を吸うとその場限りの集中力は高まるも、脳細胞がぷちぷち潰れていくような気がしていました。それはあながち間違った実感でも無かったようで、とある大学の研究によると、禁煙した者に比べ喫煙者は25%、記憶力テストの得点が低くなるという実験データがあるようです。本試験での得点を伸ばすために藁をも縋る思いであった私は、記憶力のために煙草を止めました。
実際に、模試の結果も煙草を止めて以降右肩上がりとなったので効果は実感できました。
経済面
お金が浮いた
1日1箱程度吸っていたので、月に1万2,000円程度は煙草代として出費がありました。働きながらの兼業受験生や貯蓄が豊富にある受験生であれば、取るに足らない些末な金額かもしれませんが、爪に火を灯す専業受験生にとっては痛恨の出費です。持ち忘れた都度買う100円ライター代も積み重なれば馬鹿にはなりません。そこで私は煙草を止めました。
浮いたお金の用途として、例えば、伴侶に恋人に、あるいは親御さんに、プレゼントを毎月贈ることが可能になります。受験生はただでさえ世間的に肩身が狭いので、せめて家庭内においては少しでも学習環境をより良くしていくよう、地道な努力が必要です。勉強に専念しているだけで偉いと言われるのは高校生までなのです。
独身者であれば、その点は気が楽です。しかし一方で、孤独という代償があります。外部と社会的接点を定期的に持つための交際費として利用とするのが、一つの用途として推奨されます。
アイデンティティは、他者との関係性のなかで規定される相対的なものです。学校や職場というコミュニケーションの場から一度離れれば離れるほど、自己を規定することは困難となります。結果的に、自己で自己を規定するしかなくなり、合格しなければ私は価値がないというような短絡的な思考に陥りやすくなります。そうして、自ら窮地に追い込まれるのは避けるために、定期的に知人や、もしくは赤の他人とのコミュケーション機会を設けておくことは重要なのです。
家が燃えるリスクが減った
たばこで家が燃えるリスクが減ったなんて大袈裟な、とでも思われるかもしれません。しかし、煙草を出火原因とする火事は意外と多く、総務省の資料によると、平成28年の火災における出火原因の第二位を「たばこ」が占めています。平成28年の全火災36,831件のうち10%弱、3,483件が「たばこ」での火災です。つまり、毎日、日本各地で、およそ10件近く「たばこ」での火災が発生していることになります。
引用:総務省消防庁『平成28年(1月~12月)における火災の状況(確定値)(平成29年7月28日)』
たばこで火災を発生させ隣室や隣家に損害が発生すると、隣人との関係性では失火責任法が適用され、重過失の場合は損害賠償責任を負います。東京地裁の平成2年10月29日判決によると、寝タバコの場合には重過失が認定されるようです。また、当人が賃借人であれば、大家との関係では、失火責任法の適用がなく、善管注意義務(民法400条)の債務不履行による損害賠償責任を(民法415条)負うことになります。持ち家であれば、当然その持ち家を失うことになります。火災保険に入っていたとしても、その賠償範囲をしっかりと確認しておく必要があります。
たばこを止めることで、自らのたばこが出火原因となって火災発生による損害の賠償リスクからは完全に開放されます。将来的に負ったかもしれない何百万、何千万円の負債を免れたと考えれば、儲けものでしょう。
医療費の削減に繋がった(?)
喫煙は、がんや高血圧などの生活習慣病の要因と目されており、欧米諸国では予防しうる最大の疾病・早死の原因とされています。そのため、喫煙者の方が非喫煙者よりも多くの医療費がかかると予想されますが、はっきりと統計結果で示されてはいないようです。喫煙者の方が早期に疾患にかかるリスクは増え医療費は増加するも、その分余命が少なくなるので相殺されるため、結果的に非喫煙者と比べての医療費の多寡が判別しにくくなっているのです。
1年間の平均医療費については、喫煙者のほうが非喫煙者より高額だというデータがあったので以下引用します。
引用:林田 賢史, 村上 玄樹, 高橋 裕子, 辻 一郎, 今中 雄一『喫煙者と非喫煙者の生涯医療費』日本衛生学雑誌Vol. 67 (2012) No. 1 P 52
また、当人だけでなく、同居する家族の副流煙による疾病リスクを下げる効果も期待できます。
心身面
火災で死亡するリスクが減った
上記の経済面の二つ目の利点として挙げた通り、火災の原因の二番目として「たばこ」が挙げられています。たばこを止めることで、少なくとも自らのたばこを原因としての火災のリスクを皆無とすることができます。
火災で死亡するリスクが減るということは、試験日まで生き長らえる確率を高めるということでもあります。受験生の多くが見落としがちな点でもあります。いくら頭を鍛えようとも体が資本なことを忘れてはいけません。命がなければ元の木阿弥なのです。
寿命が伸びた
上述の経済面の三つ目の利点として図表を引用した論文に、非喫煙者は喫煙者より3年半余命が伸びたという研究結果があります。煙草を止めたからといって、喫煙経験のない非喫煙者と同様の平均余命まで伸ばせるかは疑問ですが、英国のとある医学誌※では、40歳までに禁煙すれば継続的喫煙に関連する死亡リスクを90%程度軽減できるとの研究結果が示されています。
引用:林田 賢史, 村上 玄樹, 高橋 裕子, 辻 一郎, 今中 雄一『喫煙者と非喫煙者の生涯医療費』日本衛生学雑誌Vol. 67 (2012) No. 1 P 52
※参照:『21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States(米国における 21 世紀の喫煙の害と禁煙の利益)』N Engl J Med 2013; 368:341-350
食事が美味しくなった
煙草を止めると食事が進むとは巷でよく話題に上る話ですが、実際に検証した論文も発表されているようです。2014年、『Chemosensory Perception』誌に発表された『喫煙状況に応じたカフェインの苦味の知覚の違い』という論文で、塩味・酸味・甘味においては喫煙者と非喫煙者とで差異はないものの、苦味は差異があり、喫煙によって味覚障害が起こっている可能性が高いと指摘されています。
実際に、外食においては、禁煙席を選ぶために他人の副流煙に塗れた料理を食することもなくなり、料理を美味しく感じられる瞬間は増えたように思います。
参照:Nelly Jacob『Differential Perception of Caffeine Bitter Taste Depending on Smoking Status』Chemosensory Perception > 2014 > 7 > 2 > 47-55
抜け毛が減った
ニコチンには血管収縮の作用があると言われており、煙草を吸うことで血管は細くなり血液が栄養を運ぶ効率を低下します。また、AGA(男性型脱毛症)の要因の一つに脱毛ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)という物質がありますが、喫煙することでこの数値が高まってしまいます。
体感としても排水口や枕に絡まる毛髪は減ったように感じます。
運動をしたくなった
喫煙による血管収縮や一酸化炭素の取り込みによって、体力、持久力、呼吸機能等が低下します。そのため、少し身体を動かしただけですぐに息切れが起こります。そのため、喫煙しているときは、身体を積極的に動かしたいという気持ちが起こることは稀でした。
しかし、煙草を止めれば息切れも遠ざかっていくので、次第に自転車に乗ったり、ランニングやジムへ行ったりして、自発的に運動しようという気が起こるようになりました。
交際の幅が増えた
喫煙していた頃は、気兼ねなく煙草を吸える相手を飲みに誘いがちでした。喫煙者にとって、酒を飲みながら、煙草を吸えないというのは一種の拷問でもあるのです。そのため、いくら器量のよい相手がいても、煙草が苦手であれば対象から外さざるを得ませんでした。非喫煙者となった今でこそ分かりますが、飲食の最中に喫煙者の煙を浴びる方がよほど拷問であり、喫煙者の私こそが対象から外されていたのでしょう。
今は何の気兼ねもなく非喫煙者と飲食を共にできるようになったので交際の幅が増えました。
また、異性からキスを嫌がられる度合いも減ります。これも喫煙者である時分では分かりませんでしたが、非喫煙者となった今ではよく分かります。煙草を吸わない人にとっては、煙草を吸う人の腔内や舌は猛烈に臭くて不味く、嫌悪感を催すものなのです。恋は盲目とは言っても、嗅覚と味覚は充分に機能しているのでしょう。
生殖能力が強まった
喫煙者の頃、EDというわけでも無かったのですが、状況によっては機能不全となる場合が”稀に”ございました。しかし、禁煙して以降、そのような体たらくはなくなり、なんていうか、その、下品な話ですが、起床時にエレクトしているケースも増加するようになりました。
口説き落としたところで勃たなかったらどうしようという杞憂から解消されるので、異性にも積極的にアプローチできるようになるでしょう。
イライラが減った
喫煙者であった頃、煙草を咥えているときは確かにイライラを軽減できましたが、煙草を吸っていないときや煙草を吸えない場所では異様にイライラするものでした。つまり、私にとって、煙草は、煙草を吸えないイライラを解消するために吸っているようなものでした。煙草でのイライラの解消は、その場限りの対症療法であって、根本的な解消になってなかったのです。
根本的なイライラの解消は、煙草を止めることしかないと気付き禁煙することにしました。結果、当然のことながら煙草を吸えないことによるイライラは次第に雲散霧消していきました。
以上が禁煙によるメリットです。
あまりにメリットが多く、やたら長々しいものになってしまいました。
以下はデメリットです。
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禁煙のデメリット
勉強面
ずばり、勉強面でのデメリットは見当たらないでしょう。
経済面
お菓子代が増えた
勉強中や休憩中に口寂しくなるので、グミや飴、スナック菓子で紛らわすことが多く、お菓子代が増えました。
食事代が増えた
食事を美味しく感じるため、また、居酒屋では煙草を吸っていた時間を食べる時間に充てるために、その分食べる量が増えたので、食費が増えました。
お酒代が増えた
煙草を吸いながら飲めば酔いは早く回っていたものですが、煙草を吸わなければ酔うまでにその分酒量が増えるので、酒代が増えました。
心身面
体重が増えた
経済面のデメリットで挙げた通り、禁煙によりお菓子・食事・お酒の摂取量が上がるのでその分体重も増加しました。
しかし、健康嗜好となって、運動の機会が増えたために、そこまで大幅に増加することはありませんでした。
歩き煙草する者に異様に腹が立つようになった
条例違反者に対する憤りと、せっかく己が煙草を止めたのに、受動喫煙させるなという思いによるのでしょう。自転車に乗っているときなどは、車に乗りながら窓から煙草の灰を落とす輩にも腹が立ちます。
セックスのあとにやることがなくなった
男は、セックス後はえてして手持ち無沙汰になりがちです。紳士的な男であれば、事後は相手を猫なで声で慈しむものなのでしょうが、凡夫にはなかなか小恥ずかしいことでもあります。そんなときに役立っていたのが煙草でした。
即座に一人でシャワーを浴びに行くほどの非情さはなく、かと言って小粋なピロートークで相手を楽しませる器量もない男に、煙草は事後の気まずい間を乗り切るのにこれ以上ないアイテムでした。というのも煙草を吸っている間は、無言が許されるからです。おもむろに紫煙をくゆらせながら、ゆっくりと相手がクールダウンするのを待つことができるのです。
しかし、煙草を止めるともうこの技は使えません。心を鬼にするか、猫になるかの二択に挟まれ苦慮しました。
そこで私は何をしたか。ブログを更新することに決めたのです。
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おわり
以上です。思いつくままにメリット、デメリットを列挙していくと想定した以上の分量の記事となってしまいました。
ところで、禁煙はしたいけれども、煙を吸って吐いてしていなくては落ち着かないという人には、電子タバコがお薦めです。
ニコチンやタールを摂取することなく、煙や匂いを堪能できます。アロマを吸うようなものです。メンソールだけでも様々なフレーバーが用意されています。なお、電子タバコは、アイコス等の加熱式タバコとは別モノです。
喫煙具の本体が充電器も合わせて、1,000円〜5,000円程度で、電子タバコの匂いを決める消耗品のカートリッジも1,000円程度であるので、煙草よりも経済的負担が減る方が大半であるかと思います。
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