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司法書士から年収ン千万?の高給取り歩合制公務員『執行官』への道

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難関の資格試験に合格して、研修を経て実務経験を積んで独り立ちしたあと、それからのことを考えたことはありますでしょうか。生涯現役を貫く、稼げるだけ稼いで引退して悠々自適の老後を過ごす、今はまだそこまで考えが及ばない、等、色々な考えがあることかと思います。
 
司法書士、弁護士、弁理士や不動産鑑定士は、その実務経験を活かして、『執行官』という職種でセカンドキャリアを築くという道もあります。今回は『執行官』という職についての紹介になります。
 

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司法書士、弁護士、弁理士や不動産鑑定士としての実務経験が10年以上経過した者は、『執行官』の選考資格を得ることが出来ます。また、一定の等級以上の公務員や銀行員等でも選考資格は得られます。詳細は受験資格の項目で後述します。

執行官は公務員でありながら、国から給与を受けるのでなく、事件の当事者から納めた手数料を収入とします。つまり、取り扱う事件が増えるほど収入が増える、歩合制となるのです。不動産競売事件の減少により、ピーク時より執行官の年収は減少しているものの、数千万円はあるのではないかと言われています。
 
↓不動産の強制執行件数の推移

 
不定期に、各地方裁判所ごとに1名か2名の欠員募集があるかどうかというレベルの狭き門ではありますが、将来的な選択肢として考えておくと面白いかもしれません。
 
参考:平成28年度執行官採用選考の募集人数
 
札幌地方裁判所:2人程度
水戸地方裁判所:1人程度
甲府地方裁判所:1人程度
福井地方裁判所:1人程度
神戸地方裁判所:1人程度
松山地方裁判所:1人程度
福岡地方裁判所:1人程度
佐賀地方裁判所:1人程度
 

職務の内容

 
執行官法ではこのように規定されております。
 
執行官法
(職務)
第一条  執行官は、次の事務を取り扱う。
一  民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)、民事保全法 (平成元年法律第九十一号)その他の法令において執行官が取り扱うべきものとされている事務
二  民事執行法 の規定による民事執行、民事保全法 の規定による保全執行その他私法上の権利を実現し又は保全するための手続を構成する物の保管、管理、換価その他の行為に係る事務で、裁判において執行官が取り扱うべきものとされたもの

 

 
具体的な内容が、司法書士試験に馴染みのある民事執行法・民事保全法に定められております。民事執行法においては、売却のための保全処分(55条)、現況調査(57条)、売却の実施(64条)等、民事保全法においては、動産仮差押時の目的物の占有(49条)等が規定されております。平たく言えば、借金を返さない債務者を家から追い出したり、冷蔵庫に差押のシールを貼ったりするアレです。
 
原則として一人で債務者の居宅や差押物件に趣き、法律に基いて職務を厳正に行います。玄関を開けたら家主が首を吊っていることもあるようです。また、その筋との方との対峙もままあるようで、職務の執行において警察の援助を受けることも可能です。

 

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執行官の収入

先述の通り、執行官は手数料を受け、また職務の執行に要する費用の支払い又は償還を受けることができます。

執行官法

(手数料及び費用)
第七条  執行官は、その職務の執行につき、手数料を受け、及び職務の執行に要する費用の支払又は償還を受ける。

 

手数料の額は、最高裁判所の規則(「執行官の手数料及び費用に関する規則」)で定まります。

執行官法

(手数料の額)
第九条  前条第一項第一号から第二十一号までの事務に係る手数料の額は、事務の内容、当事者の受ける利益、物価の状況、一般賃金事情その他一切の事情を考慮して、最高裁判所の規則で定める。
2  前条第一項第二十二号の事務に係る手数料の額は、裁判において当該事務を執行官が取り扱うべきものとした裁判所が定める。

 

執行官の手数料及び費用に関する規則によると、例えば、売却の実施の際の手数料は、下記のよう売却金額に応じて額が定められています。仮に物件が5,000万円で売却されたとすると、45万7,200円の手数料ということです。

 

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引用:http://www.courts.go.jp/

執行官になる方法

 
選考資格のある者は選考試験を受けることが出来ます。選考試験は、第一次試験で筆記試験、第ニ次試験で面接試験が課されます。
 

選考資格

法律に関する実務を経験した年数が通算して10年以上である者。ただし,次に該当する者は,選考の対象から除く。

 日本の国籍を有しない者
 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第38条の規定に該当する者

(1) 次の実務は,「法律に関する実務」として扱われます。

一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第6条第1項各号に規定する俸給表のうち,次の(ア)から(エ)までに掲げる俸給表の適用又は準用を受ける職員としての実務
(ア) 行政職俸給表(一)
(イ) 税務職俸給表
(ウ) 公安職俸給表(一)
(エ) 公安職俸給表(二)
弁護士,弁理士,司法書士又は不動産鑑定士としての実務
銀行,長期信用銀行,信用金庫,労働金庫又は信用協同組合における実務

 
慣例として、裁判所書記官が退官後に就任するケースが多いようです。現場での執務が多く、相当程度の気力、体力を要することにかんがみて、満65歳で退職する扱いになっています。
  

第1次試験

 

 筆記試験(択一式)
出題分野 : 憲法,執行官法,民法,民事訴訟法,民事執行法,民事保全法,刑法
出題数 : 計20問
計20問 : 1時間
 
筆記試験(論文式)
出題分野 : 民法,民事訴訟法,民事執行法
出題数 : 各1問
計3問 : 3時間
 
裁判に関する事務を行うために必要とされる国家試験に合格した者については、筆記試験の一部又は全部を免除されることがあります。該当者に対しては免除の範囲等が別途通知されるようです。 裁判に関する事務を行うために必要とされる国家試験とは、司法修習生考試、簡易裁判所判事選考試験、副検事選考試験、司法書士試験及び弁理士試験を指します。
 
論文式の問題では、一行問題として『公示の原則と公信の原則について説明せよ』『処分権主義について説明せよ』等の内容の出題実績があります。判例・解説のないもの一冊に限り六法の使用が認められています。
 
なお、過去問は各地方裁判所にて配布されるようなので、希望者は最寄りの地方裁判所にお問い合わせしてみて下さい。

 

 

第2次試験

面接試験
人物,適性及び執行官に必要とされる専門的能力についての個別面接

 

引用:執行官採用選考試験案内

 

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執行官採用スケジュール

わりとコンパクトに選考は進みます。

 

詳細な日程は下記サイトで発表されます。

裁判所|執行官採用選考試験案内

 

終わりに

 
難関資格合格を目指そうとするなかで、調べていく内に思ったほど年収が稼げそうになく、モチベーションが下がることもあるかもしれません。そんなときは、執行官というルートも将来の視野に入れて受験勉強を進めていきましょう。司法書士試験であれば、退屈な民事執行法や民事保全法の勉強にも興味が出てきて一石二鳥です。