ご存知の通り、平成26年会社法改正により、社外取締役および社外監査役の資格要件が一部緩和され、一部加重されました。
多くの受験生にとっては、社外取締役および社外監査役の資格要件については、ややこしさの極まるものであって、なんとなく「会社の関係者は社外になれない」といった理解で押し切っている方も多いかと思われます。予備校講師によっては、上記の理解で充分とする方もおります。
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しかし、昨今の司法書士の択一式試験の傾向を見ますと、改正点は試験委員の大好物であり、その問われ方も上辺だけの理解では正答を導けない肢となっているので、来年度以降に会社法や商業登記法で、社外の資格要件の詳細を問われる可能性は大いにあり得ると言えるでしょう。
また、記述式試験においても、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社を設置できるか、特別取締役の議決の定めを設定できるか等に絡む論点となり得、社外の資格要件は正確な理解をしていないがために連鎖して大きな減点になりうるものでもあります。
そこで、今回の記事では社外取締役および社外監査役の資格要件を図表に落として整理しました。また、具体的に、社外取締役の要件を満たす例と満たさない例も図示しました。ややこしいものも図にまとめてみれば大したものではありません。受験生の理解の助けになれば幸いです。
社外取締役および社外監査役の資格要件
会社法第2条第15号のイロハニホの要件は下記のようにざっくりとまずは理解しておきましょう。
イは現在・過去
ロは過去に取締役・監査役であったもの
ハは親会社がらみ
ニは兄弟会社がらみ
ホは役員の関係者
なお、兄弟会社とは「株式会社の親会社等の子会社等(その株式会社およびその子会社を除く)(会社法2条15号ニ)」を指します。また、親会社等とは「親会社」および「株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く)として法務省で定めるもの」を意味します(会社法2条4号の2イロ、会社法施行規則3条の2第2項・3項)。
ちなみに、図表にある「ぎょうむ・し・し・し」「とりさん・し・し・し」というのは語呂です。
「ぎょうむ(業務執行取締役)・し(執行役)・し(支配人)・し(使用人)」、「とり(取締役)さん(会計参与)・し(執行役)・し(支配人)・し(使用人)」を表しています。
社外取締役の要件を満たす例
①10年内に業務執行取締役等でなければ社外取締役になれる
②10年内に非業務執行取締役等でも、その就任前10年内に業務執行取締役等でなければ社外取締役になれる
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社外取締役の要件を満たさない例
①10年内に業務執行取締役等であれば社外取締役になれない
②10年内に非業務執行取締役等で、その就任前10年内に業務執行取締役等であれば社外取締役になれない
根拠条文
図表で概要を理解すれば条文も読みこなしやすくなります。確認しておきましょう。
(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。イ その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
参考書籍
図表の作成に辺り以下の書籍を参考としました。本書によって、なぜ社外取締役、社外監査役の資格要件が一部緩和、一部加重されたのかという理屈の面から理解を進めることが可能です。
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なお、『一問一答 平成26年改正会社法』については、下記の記事でも言及しております。