過去問を何周か回し始めて慣れてきたら、漫然と設問を解くだけでは知識の定着にはなるものの知識の増幅は計りにくくなっていきます。
そこで、過去問を解くときに覚えておけば、知識を増幅させることができるような視点をいくつか紹介します。受験生なら当たり前にやっているようなことかもしれません。
視点その1:肢におけるキーワードを類似する概念に置き換えて正誤や要件効果を考える
肢におけるキーワードを類似する概念に置き換えて正誤や要件効果を考えることで、知識を増幅させていくことが可能です。
例えば、以下の肢でハイライトの部分を置き換えてみます。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者の四親等の親族は、その者について後見開始の審判の請求をすることができる(平成25年第4問)答:正
▷保佐・補助開始の要件は、『欠く』ではなく何になるか?
▷『後見』ではなく、保佐・補助でも四親等の親族が請求できるか?
▷後見開始の請求権者は、『四親等の親族』以外に何があるか?
等、一つの肢から知識を派生させていきます。その他の例としては、賃借権の肢なら地上権ではどうか?、使用貸借の肢なら賃借権や消費貸借ならどうか?といった具合です。
視点その2:選択肢の反対解釈を考える
選択肢の反対解釈を考えることでも、知識の増幅を図れます。
不動産質権者は特約がない限り、被担保債権の利息を請求することができない(平成2年第8問民法)答:正
▷ということは、特約があれば、不動産質権者でも利息を請求することができるということ
視点その3:肢が原則なのか例外なのか再例外なのかを意識する
過去問で問われるものは、例外や再例外が多くあります。基礎がままならない状態で過去問を解いていると、その例外や最例外を原則として捉えてしまい、正しい理解を妨げてしまいます。過去問に当たるときは、この肢は原則か例外か再例外か、例外であれば原則は何か、原則から例外となる要件は何か把握しておきます。そうすることで、微妙な問題の肢でも精確に読み解けるようになっていきます。。
例えば、抵当権者の自己への明渡請求の可否について、試験テクニック的には、「明渡請求できる」と単純に覚えてこんでいる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、抵当権の非占有権としての性質より「明渡請求できない」ことが原則になります。あくまで、抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合(最判平17.3.10)に、抵当権者自身への明渡請求が例外的に認められているに過ぎません。
▷原則か例外かを意識することで、例外となる要件を精確に覚えられるようになっていきます
Sponsored Link
視点その4:(不動産登記法)選択肢に出てきた物権変動の登記申請書を思い出す
択一の勉強をやりながら、記述の勉強も兼ねる一石二鳥のやり方です。実際に本試験でも択一で問われた内容を、数年後に記述で出題するというパターンも散見されます。
受託者が信託財産を自らの固有財産にする場合、裁判所の許可を得て、単独で登記を申請することができる(平成12年第25問不動産登記法)答:誤
▷単に「裁判所の許可はいらねぇ、✕」で終わらせることなく、「委付のことね、登記目的と登記原因は何だったか」と思い出すことで、単純な問題でもどんどん知識を定着・増幅させていくことが可能です。ちなみに目的は「受託者の固有財産となった旨の登記 及び 信託登記抹消」、原因は「年月日 委付」です。
▷なお、記述問題において信託登記は平成26年に一度出題されているおり、今後出題が予測されるので、対策を立てておくべきでしょう。
まとめ
単純に過去問を繰り返しているだけでは、司法書士試験の基準点に達することは至難ですが、上記のように解き方に工夫を加えていけば実力を基準点超えに近づけていくことも可能です。最小限の労力で、最大限の効果を図れる解き方を模索していきましょう。