民事訴訟法における、和解条項案の書面による受諾(264条)と裁判所等が定める和解条項(265条)は、受験生が混同しやすい論点です。
司法書士試験過去問平成11年第5問肢(4)で出題されています。
問題
(4)裁判所は、当事者の一方の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる
答え
誤り ∵ 和解条項は、当事者双方の申立が必要(265条)
264条は一方の書面提出であって、265条は双方の申立であるという点が大きな違いです。
頻出論点というわけでもないので、必須の知識でもありませんが、一度出題されている以上、しっかり習得しておく方がよいでしょう。
そこで今回は、訴訟上の和解の特殊な手続である、和解条項案の書面による受諾(264条)と裁判所等が定める和解条項(265条)を整理してみました。
和解条項案の書面による受諾(民事訴訟法第264条)
書面和解とも呼ばれます。こちらの呼称の方がイメージが湧きやすいでしょう。その内容は、一方の当事者が遠隔地に住んでいる場合等に、その遠隔地に住んでいる当事者が、あらかじめ受託裁判官や受命裁判官から提示された和解条項“案”を受諾する旨の書面を提出し、もう一方の当事者が期日に出頭したときは、訴訟上の和解が成立したものをみなされるものです。当事者の双方に和解条項”案”を受諾するかどうか選択の余地がある点に注意です。
図示してみました。
条文を確認しておきましょう。
(和解条項案の書面による受諾)第二百六十四条 当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
裁判所等が定める和解条項(民事訴訟法第265条)
裁定和解とも呼ばれます。当事者の双方の申立によって、裁判所等が和解条項を定め告知するものです。書面和解との相違点として、和解条項の定めが双方に告知されたときに、和解が成立したものとみなされること、また、当事者が和解条項について受諾するかどうかの自由がないことが挙げられます。なお、告知前であれば取り下げることが可能です。
図示してみました。
条文を確認しておきましょう。
(裁判所等が定める和解条項)第二百六十五条 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。2 前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。3 第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。4 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。5 第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
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まとめ
和解条項案の書面による受諾(264条)と裁判所等が定める和解条項(265条)の相違点を図表にまとめてみました。
なお、両手続きともに、便宜的な和解手続であって、離婚訴訟や離縁訴訟には適用されないこと(人事訴訟法第37条第2項、第44条)、および訴え提起前の和解についても適用されないこと(民事訴訟法第275条第4項)を押さえておいてください。
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