司法書士になる!

司法書士受験に特化した内容と学習全般に通じる情報とを提供するブログです

予備校の教材のために会社法が苦手科目となる人が多い理由とその処方箋

f:id:tsjtksh:20170731124840j:plain

会社法を苦手科目とする人が多いのはなぜか

会社法って苦手だな、面白くないな、この世から消えればいいのにな。そんなことを思ったことはありませんか。私は常々そう思っていました。振り返れば受験において、会社法への苦手意識を克服することが一番大変だったかもしれません。なぜなのでしょうか。

 

予備校のテキストや参考書は、過去問の出題部分を中心に編纂されています。会社法は特に範囲が膨大となるので、その傾向が顕著です。予備校の使命として受験勉強において覚えなければいけない事項を優先させなければならず、択一試験では問われにくい趣旨や理屈付けは、簡略化あるいは省略して編纂せざるを得ないという事情があります。そのために往々にして、予備校のテキストは各々の項目を整理するためには向いているが、それらの項目を頭に染み込ますには不適なものとなりやすいのです。その結果、受験生は力技で頭に叩き込まざるを得ず、会社法が苦手科目となりやすいのではないでしょうか。
 

話は少し逸れますが、某予備校のテキストでは、特別支配株主の株式等売渡請求のページは条文を並べて貼り付けているだけというのもありました。そんなときは誰かを恨みたくもなりましたが、恨んだところで合格が近付くわけでもありません。そもそも予備校のテキストは、学者が記述しているものではなく、学者の書籍を参考にして社員やアルバイトが記述しているところが多いので、致し方ないところかもしれません。
 

会社法を苦手科目から得意科目にするために

そこで、今回は、理屈を重視して会社法を理解したいという人にお薦めの書籍を紹介します。

 

有斐閣の『会社法  第3版(LEGAL QUEST)』です。

会社法 第3版 (LEGAL QUEST)

会社法 第3版 (LEGAL QUEST)

 

 

この書籍の素晴らしいところは、制度の趣旨や理由付けが非常に丁寧に記述されている点にあります。
  
たとえば、先ほど挙げた株式等売渡請求の例でいえば、その制度創設の経緯から、なぜ株主総会が不要なのか、なぜキャッシュアウトとして略式株式交換では足りなかったのか、まで記載されているので、腑に落として制度を理解できます。
 
司法試験合格を目指すロースクール生の間では「神本」と崇められいるというのも納得です。司法試験では、制度趣旨を抑えていることが論文答案を書く大前提となるためです。
 
加えて、本書の特徴として、比較的コンパクトに内容が一冊に収まっていることが挙げられます。見た目の分厚さは、会社法の基本書のスタンダードである江頭先生の基本書のわずか2分1程度なので、心理的なハードルも低く読み進められます。
 
年明けから直前期に読むような書籍ではありませんが、アウトプットの演習にそれほど時間を割かなくてもいい夏から秋にかけて、一読するには絶好の書籍かと思います。会社法を得意科目にして、午前科目の最難関を乗り切りましょう。