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僕らが虐げられ続ける理由(あるいは短期合格するための要諦)

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前置き

就職や営業、経営、そして男女関係の交際など、人生の岐路において交渉の場は数多く訪れます。にも関わらず、日本人は交渉について学ぶ機会を取り立てて設けるということをあまりしません。そのため、単純な立場の強弱によって交渉の優位が決まり、弱い立場の者は虐げられた条件を飲まざるを得ない場合が多くあります。
 
では、この立場の強弱というものを作っているのは一体何なのでしょうか。どうすればその強弱を逆転できるのでしょうか。今回は、交渉を有利に進めるための一つの基準についてお話してみようと思います。昔、コンサルタントの真似事をしていたのでその杵柄でもあります。そして、この話は、資格試験の学習にも通ずるところでもあります。
 
ずばり言ってしまえば、交渉を有利に進めるための一つの基準とは、『どれだけ他に選択肢を有するか』という点にあります。逆に言えば、選択肢の無いものほど交渉では虐げられるということでもあります。どういうことか具体例をいくつか出してみましょう。
 

具体例 

1)就職

就職活動中の者がいたとして、何が何でもこの会社に入らねばならない、といった選択肢が一つしかない心境・環境であると、その会社にその者の生殺与奪の権利を握らせることになります。会社が提示する条件をそのままに飲み込まざるを得ない状態となります。結果として、細かな待遇面を確認できなかったり、市場価値よりも劣悪な条件下での雇用契約を結ばざるを得なくなるのです。
 
しかし、すでに内定先があったり、他に企業からオファーが入っている状況であればどうでしょうか。仮に志望している企業が不採用でも他に選択肢があるので、余裕をもって面接に臨めますし、細かな条件面を確認していくことも容易です。また、待遇においても他の企業のオファー内容と比較できるので、不利な条件を拒んだり、条件の見直しを要求したりと強気に先方と交渉できるようになるわけです。
 

2)営業

このクライアントにこの商材を絶対売らないといけない、といった状況がもっとも営業マンにとって不利な状況になります。その場合、相手からの契約条項の修正や値下げ要求なども受けざるを得ず、契約が運良く取れたとしても不当な条件での契約となりやすいのです。
 
仮に、そのクライアントにその商材を売れずとも、同一商圏の競合他社に売れればそれでいいという状況であったとしましょう。そうなれば、お願いします一辺倒の土下座営業から脱却でき、相手の不当な要求も却下することが可能になります。また、相手としても契約を結ばないことでのデメリットが明確となり、結果として有利な条件で契約を結びやすくなるのです。
 

 

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3)経営

取引先が一社しかない下請け企業を想定してみます。その取引先からの受注がなければ、銀行への支払が滞り倒産してしまうわけですから、不当なダンピングや納期の短縮などの要求を飲まざるを得なくなってしまいます。
 
この場合も、その他の取引先という選択肢を作れば作るほど一社への依存度が下がり、無限に無茶な要求を聞き続けなければならない悪循環から脱することができるというのは当然の話です。
 

4)男女関係

ビジネスだけでなく男女関係にも当てはまります。たとえば、意中の相手があって、どうしてもその人と付き合いたい、他の人では無理だという状況があったとしましょう。そうなると落とすために失敗できないということから余裕もなくなり、すべての物事に必死になってしまいます。結果、熱意だけが空回りする痛い奴として恋愛対象から外れてしまうのです。運良くそれが誠意と見られて成就することがあっても、付き合ったその後に上下関係が固定化されてしまうリスクがあります。
 
一方、他に選択肢があるとどうでしょうか。その意中の相手にフラれたとしても、他の人といくらでも付き合えるという状態です。そうなれば、フラれたところでダメージはそうないので、余裕をもって物事を大胆に進められるようになります。それが結局は、異性としての魅力を増幅させることにも繋がります。これが、モテる人はよりモテて、モテない人はとことんモテないという悲惨なメカニズムの正体でもあります。
 

 

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ポイント

まとめると、交渉において他の選択肢をもつメリットは次の2点です。
 
①精神的な余裕が生まれる
 
②不利な条件下での交渉成立を避けられる
 
結果的に、他に選択肢を準備しておくことが、本来の選択肢を通しやすくするわけです。
 

資格試験の場合

 
資格試験は、純粋な交渉とは言えませんがこの考え方が通ずるところもあります。
 
資格試験の場合、選択肢を持たない状況というのは、その資格に今回合格するしかないという背水の陣を敷くような状況です。後に引けない状況を作るというのも一時的に集中するためには有用でもありますが、難関資格になればなるほど、そのような心理状況で受験勉強を続けるのは逆に心のゆとりが無くなっていくことになります。後に引けない状況はあせりを生み、そのあせりは、受験勉強において理解や記憶を鈍らせますし、本番においても正常な判断を妨げるものになります。かと言って他に選択肢がない以上、その資格試験から撤退することもできず、どんどん費用と手間と歳月を無尽蔵に費やしていってしまうわけです。
 
それでは選択肢を持つとはどういうことになるでしょうか。その資格試験に不合格であっても、代替できるような道筋を事前に用意しておくことです。その道筋は、当該試験に合格することとメリットが釣り合うようなものであるほど効果は高いと言えるでしょう。たとえば、司法書士試験に不合格であれば法科大学院入試対策へと切り替えて弁護士を目指すといったような選択肢が考えられるでしょう。このようにもしものときの保険のような選択肢を自ら準備しておくことで、不合格であったときの恐怖や不安が薄らぎ、日々の勉強も身が入るようになり、本試験でもリラックスした精神状態で臨めるわけであります。仮に不合格であっても他の選択肢があれば、どこで損切りするかの基準が明確であります。
 

 

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最後に 

交渉において、他に選択肢を用意しておくことの意義が伝わりましたでしょうか。なかなか頭では理解できていても、いざ実践するとなると難しいものではあります。しかし念頭に置いておくだけで、人生の岐路での選択をより良いものにしていくために役立つこともありますのでぜひ覚えておいて欲しいところです。
 
なお、交渉学ではこうした他の選択肢を用意しておくことは『BATNA(Best Alternative to Negotiated Agreement)』と呼ばれています。交渉では、自らのBATNAをどれだけ用意できるか、そして相手のBATNAをどれだけ分析できるかによってその成否が分かれると言われております。
 
交渉学について、もう少し詳しく知りたい方は下記の書籍が読みやすくお薦めです。
武器としての交渉思考 (星海社新書)

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